【愛とは。】11…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
明け方。
遠い記憶から意識を漂わせ、ゆっくりと目を開けるス。
下腹部を中心に身体中を走る鈍い痛みに、
思わず眉を顰める。
(体が重くて動かない…)
ため息をつくも、自らを包む温かさに気づく。
…
顔をそっと動かすとそこには
後ろから自分を抱きかかえるソの姿が。
大きな胸にすっぽりと抱き込み、
足をからませ、
寝ていてもなお腕の力を緩ませることはない。
…
悪夢のような夕べの出来事を思い出すも、
穏やかな表情のス。
視線を動かし、ソの顔をのぞく。
涙の跡を拭うこともなく、
瞳が閉じられたその顔は
大きな悲しみを湛えている。
じっと見つめるス。
その気配に、目を開けるソ。
…
悲しい眼差し。
その瞳を見ながら
なにかを発しようとしても
喉が苦しくてスは言葉が出ない。
片眉をわずかに上げ
心配そうにスの顔をのぞきこむソ。
小さく口を動かすも
なおも言葉が出ない。
…
「水か? 水を飲むか?」
強く抱きしめていた腕をようやくゆるめ、
起き上がるソ。
…
水差しの置かれた机に向かうソの背中。
無防備にさらされた半身には
いままでの人生の悲しみを物語る無数の傷跡が。
そして、その上に新たに加えられた
新しい搔き傷。
肩から背中、腰まで、赤い線が走る。
自らがつけたその跡をじっとみるス。
…
水差しが乗った盆を手に戻り
起き上がろうとするスを優しく抱き起こす。
膝の間に座らせ、茶碗に水を注ぐ。
ゆっくりとスに水を飲ませる。
小さく上下するスの喉には
ソがつけた指跡。
そして、襟からのぞく首筋と胸もとには
たくさんの口づけの跡。
茶碗に2杯目を注ぎ、飲めと促す。
静かに水を飲むス。
もう1杯水を注ぎ、どうだ?とのぞきこむ。
小さく首をふるス。その盃を自ら飲み干すソ。
…
水差しと茶碗を置き、向き合うも
ともに言葉はでない。
…
ようやく小さな声で
「おまえを傷つけて、すまない」
…
(続きます)
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