番外編【愛とは。】行到水窮處2…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
水の中に沈む体。もがこうにも関節も筋肉も固まり、いうことをきかない。
(苦しい、息ができない。頭が痛い、割れそうに痛い…)
薄れいく意識の中で思い出すのは、コ・ハジンとしての辛い記憶。
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(このまま、1000年くらい眠っていたい…もう、二度と目覚めたくない…)
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(ああ、そうか。わたしは死ぬのね。死というものはこうやって訪れるんだ…)
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(すべてを忘れてしまおう。そう夢だった…あとはただ、こうして漂っているだけ…)
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静か。とても静かな、無。なにもない。空っぽな世界に、飲み込まれていく。
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そのとき、、、
突如、頭の中に飛び込んできた情景の数々。
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高麗、松嶽、皇宮、茶美園…。浴場でのできごと。
大晦日の儺礼。はじめて味わった死の恐怖。
ウクの屋敷で過ごした日々。ミョンとの想い出。
皇帝とは? 皇位を守ることとは? 皇宮の人々…。
誕生日を祝う皇子たち。花を飾り歌をうたう。
雪の日の景色。大切な人たちとの別れ…
そして、雨乞いの儀式
皇子たちの顔が浮かぶ…
振り返るひとりの男…
(光宗?)
「おまえはわたしの人だ」
「覚悟しておけ」
「わたしの顔に触れたときも…」
「おまえを決して手放さぬ」
聞き覚えのある懐かしい声が頭の中を巡る。
(そう、あの人は…
第4代皇帝光宗…名はワン・ソ)
次々に蘇る、記憶…
差し出された手…その温かさと力強さ。
見つめ合う瞳はときに優しく、ときに情熱的で。
重ねた唇の感触は忘れることなく、いまも残る。
(夢じゃなかった)
(わたしは、忘れていない…)
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現代。ソウル。
肖像画を前に涙を流す女性。崩れ落ち、意識を失う。
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そこに、背後から近づく、ひとりの男。
(続きます)
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