番外編【愛とは。】行到水窮處3…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
高麗、松嶽。
東池。願いの石塔。
大小の石塔に並んで建つのは、一基の墓標。
じっと立ち尽くす、ソ。
苦しそうな表情で、瞳を閉じる。
…
そこに…
微かに感じる懐かしい気配。風の中にただよう香り。
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皇宮。スの部屋。
寝台に横たわるス。
血の気を失い、感じられるのは弱々しい息づかいのみ。
スの手を固く握るソ。頬に流れる涙をぬぐおうともしない。
…
小さな、小さな声で
「いいえ、忘れます。すべてを忘れます」
涙を湛えた瞳が
だんだんと光を失う。
「ダメだ、スよ!」
ソの叫ぶ声が部屋にこだまし、大きく響く。
「私を捨てるのか? ダメだ。逝かせてなるものか。
わたしを、わたしを、ひとりにするな…」
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東池。願いの石塔。
懐かしい気配。風の中の香り。
…
なにかに気づき、瞳を開くソ。
振り返った先には…
…
ひとりの少女。
(ああ。ス、よ…)
(続きます)
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