番外編【愛とは。】行到水窮處7…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
「だから、すべて、すべて忘れます」
…
「母上!」
抱きつくソラ。
静かに瞳を閉じるス。
「ダメだ、戻ってくるのだ。
許さぬ、許さぬ。
わたしを捨てないでくれ。ひとりにしないでくれ。
スよ、スよ、スよ…」
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東池。願いの石塔。
背後に近づく懐かしい気配に振り返るソ。
(ス、よ…)
目の前の少女の顔をみながら
思わず出かけた言葉を飲み込む。
大きな丸い瞳、愛くるしい唇。そして、屈託のない笑顔…
(ああ、わたしのスよ…)
…
「父上」
目の前の少女が小さくお辞儀をして顔を上げる。
「やはりここでしたか。
今日は一緒に来ようと約束したではありませんか?!」
母によく似た面差し、明るく響く声。
「ああ」
小さく、申し訳なさそうに頷くソ。
「それに…」
呆れながらも少し寂しそうな顔になり
「わたくしが母上に似てきたからといって、そんな辛そうな目で見るのはおやめください」
「そうだな。すまない、ソラ」
正面からの眼差しに耐えられず
視線を逸らし、瞳を閉じる。
ソラ、小さくため息をつきながら
「母上が亡くなって3年も経つというのに、父上の悲しみが癒えることは一時もないのですね…」
笑顔を取り戻して
「さあ、お参りしましょう、父上」
(続きます)
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