番外編【愛とは。】兄として1…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
【愛とは。】第33話の夜から。
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スの部屋。婚姻の儀の前の夜。
向かい合うソとス。
「陛下、ひとつだけお願いがあります」
「おまえのお願いほど恐ろしいものはない。だが、仕方がない。言ってみろ」
「ご家族のことです…」
「家族?」
「はい。ウクさま、ヨナさま、ウォンさま、そして黄州院さま…」
いままでの柔らかな表情から一転して、険しい表情になるソ。
「明日の婚姻の儀が済んだら、それぞれの処分は果たす。謀反を企てた者たちだ。皇帝として厳重な処罰をするしかないであろう」
「陛下、どうか皇帝としてではなく、ご家族として接していただけないでしょうか?
わたくしからのお願いはそれだけです」
「家族として、だと?!」
さらに険しい表情になるソ。
「おまえまで命を狙われたんだぞ。恐い目にあったではないか!
許すわけにはいかない。家族として接することなど到底無理だ」
正面からしっかりと目をみつめ、ソの両手をとるス。
「こうやって手を握れば温かい。
そんな感触も死んでしまっては味わうことができません。
神聖皇帝、正胤さま、先帝のヨさま、ウンさまとスンドクさま…
陛下はすでにご家族を何人も亡くされています。
もうこれ以上、大切な方たちを手放してはなりません」
「しかし…」
「人生にはさまざまな転機があります。
ちょっとした行き違いやタイミングで、その後の人生が大きく変わってしまうこともあります。
オ尚宮さまやウンさまご夫妻をわたくしが救えなかったように…」
スの顔を見ながら、苦しさを隠しきれないソ。
「だからもうこれ以上、辛いことは起こしてほしくないのです。
憎しみから憎しみが生まれるのはもう耐えられません。
憎しみを愛情に変える人こそ、わたくしの愛したワン・ソさまであり、高麗を治める名君・皇帝光宗陛下なのではないでしょうか?」
ゆっくりと瞳を閉じ、物思いに耽る。
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婚礼の儀。玉座の前にウク。
静かにソと見つめ合う。
「かつて顔に傷のある皇子がいたそうだ。
その者はどうなったであろう…」
肩を落とし、下を向く、ウク。
両脇をペガとジョンに抑えらる。
そんなウクの姿をみて呆然とするウォン。
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婚姻の儀の後に行われた宴の席もそこそこに
屋敷へと戻り、ひとり部屋に籠るウォン。
(チェリョンは皇宮を去っていった。
わたしもこのまま黙っていれば、どうにか…
いや、だが、ウク兄上が捕らえられたいま…
わたしは、どうしたらいいのか)
そう思いを巡らせていた矢先、
「大匡ペガさまがお見えです」
…
部屋に入るペガ。手には一巻の書状が。
怯え、動揺するウォン。
「陛下からの命令書だ。勅命としてウォン兄上に伝える。
皇弟ワン・ウォンに向こう10年間、各地の浦の見回りを命じる」
目を見開き狼狽えるウォン。
「10年…浦へ…」
「反逆罪に問われなかっただけよかったと思ってください。
本来なら流刑のところでした」
悔しそうに下を向くウォン。
「それから、これはソ兄上からの伝言です」
「ウォンは兄弟のなかでもしっかり者だ。それ故に今までなかなか気にかけてやることができず、すまなかったと思っている。
賢く、人付き合いのうまいウォンのことだから、難しい仕事を任せても心配はないだろう。
元気な姿で松嶽に戻ってくる日を待っている」
驚いた顔をして「陛下…」
「陛下は皇帝としてではなく、兄としてウォン兄上のことを気にかけています。どうか期待に応えて帰って来てください」
ウクの顔をじっと見つめるウォン。
(続きます)
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番外編は、【愛とは。】の最終話から続いています。
オリジナルストーリー(本編)18話から枝分かれした物語です。
この物語の冒頭は【愛とは。】33話からリンクしています。
おまけ の前のお話ですよ♪(ムフフフフ〜)
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今回の番外編の主役は、第9皇子ワン・ウォンさま。8人の皇子さまの中にあっては、控えめな存在でしたが、裏で手を引いてさまざまな悪巧みに関係していましたよね!
「憎たらしい!!!」と思いながら本編をみておりましたが、ウォン皇子さま演じるユン・ソヌさんはとても爽やかな好青年。舞台出身の俳優さんだそうです。
『麗』ではクローズアップされる機会が少なかったので、こちらでお楽しみください!
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番外編【愛とは。】兄として は3部作です。次回は明日、更新の予定です…♪