【昭と樹】麗 花萌ゆる8人の皇子たち(Moon Lovers 月の恋人 歩歩驚心)《二次小説》

18話があまりにも辛すぎて、受け入れることができず…

【愛とは。】6…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》

 

 

正殿前の皇宮広場。

 

高麗国内だけでなく、周辺の国々からの使臣も集まり見渡す限りの人、人、人。

 

それを見下ろす玉座にいるのは、皇帝光宗ワン・ソ。

人々は一斉に跪き、鳴り響く声

「皇帝陛下にご挨拶いたします。万歳、万歳、万々歳」

 

(ああ、皇帝になるとはこういうことなんだ…)

皇后の席に着きながら、

夢ともうつつとも思えず、スはその光景をじっと見つめることしかできない。

 

 

 

 

朝賀の挨拶として、玉座の前に集まった豪族たちが

次々と皇帝に祝いの言葉を述べる。なかには控えめにスに挨拶をする者も。

 

そんな豪族たちをかきわけ、ス、ペガ、ジョンを従えたソは皇太后に近づく。

「謹んで新年のご挨拶を申しあげます。元気になられて良かったです…母上」

 

ジョン、そしてスの姿を見たあと、ソに視線を戻し「新年おめでとう、ソよ」

母からの言葉にわずかに頬を緩ませるソ。

 

反対側の席から近づく、黄州院ファンボ氏、ウク、ヨナ。

「皇帝陛下…」とウクが言葉をかけるがそれを無視し、玉座に戻る。

皇帝に拒まれたファンボ一族に豪族たちの視線があつまる。

 

「宴の用意はできているな。

皆のもの、さあ、参ろう」

広場に響き渡る皇帝ワン・ソの声。堂々としたその風格に、恐れ、従う豪族たち。

 

厳しい表情を変えないままソはスの方を振り返り

「先に下がれ。ジョン、ペガ、ついていてくれ」

 

 

****

 

 

スを先頭にペガとジョン。歩きながら

 

「もう、今日はなんなの! 

あんなところに座らされて、迷惑ったらありゃしないわ。

こんな服まで着て、変だなと思ったのよ。

あー、緊張するし、みんなの視線は恐いし、死ぬかと思った!!!!」

そんなスを見て、緊張が解けたのかくすくす笑うペガとジョン。

 

「ねえ、どうして教えてくれなかったのよ。

あんなところに行くって知っていたら、逃げ出していたわ」

 

スの部屋の前まで来た3人。

「姉上、わたしたちはこれで…」と頭を下げるジョン。

 

「えっ、帰っちゃうの??? 

 

こんな状態なのにひとりじゃ、興奮して眠れそうにないわ。

陛下は元旦節の宴ですぐに帰ってこないだろうし、

文句を言う前に発狂しちゃいそう。

それに、陛下だけ美味しいもの食べるなんて、ズルイ!!! 

あー、喉はカラカラ、お腹もぺこぺこ。

2人だってお腹が空いてるでしょ?」

 

困った表情をしている2人に…

「そうだ! よし! 打ち上げしましょ。3人で打ち上げ、打ち上げ!」

 

「うちあ、げ?」

 

「そうそう、大変な仕事が終わったら、みんなで打ち上げするのよ。さ、入って」

 

ペガとジョンを無理矢理部屋に押し込むス。

女官に「ねえ、食べる物を用意して。お腹が空いて倒れそう。あと、お酒もお願い!」

 

2人に向き合って「今日は飲むわよ! ファイティン!」

 

「でも…わたしたちがここにいては、まずいです」とペガ。

 

「どうして?」

 

「皇帝の女人の部屋に他の男がいては…」とジョン。

 

「皇帝の女人? バカ言わないでよ。女人なんてものになった覚えはないわ。

あんな儀式なんて、糞食らえよ!」

 

「糞食らえ…?!」

 

「ここはわたしの部屋。そして、、わたしとあなたたちは友だち。以上! 

自分の部屋に友だちを招いてなにが悪いの?!」

 

「ささ、寛いで」と2人を奥へと案内するス。

 

「ジョンさまはそんな恐ろしいものは脱いで」と鎧を脱がせる。

 

「わたしもちょっと着替えてくるわ」

 

困ったように顔を見合わせるペガとジョン。

「陛下についているよう言われた。

兄上がお戻りになるまで、ここにいよう」というペガ。うなずくジョン。

 

脱いだ鎧を部屋の隅に置くジョン。扉を開けると廊下の隅には兵たちが。

兵を呼び、しっかり警備するよう指示する。

 

 

****

 

 

少し疲れた足取りでスの部屋へと向かうソ。

宮のまわりや廊下にはさりげなく兵が。

 

部屋の中からは賑やかな話し声。

扉に手をかけ、眉を顰める。

どうやら、どんちゃん騒ぎをしているようす。

 

「姉上、もっと飲め飲め!」とスの盃に酒を注ぐジョン。

 

盃を受けながら

「だいたいねー、こんな堅苦しいところ、わたしには無理なのよー。

新年だか、新皇帝だか知らないけど、

キンキラキンのあんな高い席に座ったり、

堅苦しい挨拶とか、もう無理無理、絶対に無理。

わたしみたいなお気楽人間は、ここにはいちばん相応しくないわけ。

それに今日の陛下! あれなに?!

こんな目を吊り上げて、恐い顔して。

睨まれたって恐くなんかないんだから!」

 

「スよ、今日、兄上は精一杯…」そんなペガの声も届かず…

 

「皇帝がなによ! 皇宮なんて、いろんなルールに縛られちゃって、バカみたい。

いじめたり脅したり、手を結んだと思ったら裏切ったり。陰湿よ。

やるんなら、正々堂々と勝負しなさい! もう肩が凝ってしょうがないわ!」

 

スが机をバンと叩く、と同時に扉を開けて中に入るソ。

 

しーんとなって

「ああ、陛下、お戻りですか」立ち上がり、一礼するペガとジョン。

 

「これはなんの騒ぎだ?」

 

不機嫌なソの顔をトロンとした目で見つめるス。

 

「あの、兄上、打ち上げです…」とペガ。

ソ「うちあ、げ?」

ジョンも慌てて「はい、姉上が打ち上げをしようと…」

 

酔っぱらってヘラヘラと立ち上がったスは、ソに近づきながら

「そうそう、陛下。打ち上げ、打ち上げ。

大変なことのあとは、パッと飲んで打ち上げるのよ。

あんな馬鹿らしい儀式に出席させられて、超疲れちゃったわ。

 

わたしたちもだけど、陛下もお疲れよね。ね。

豪族たちを相手に、皇帝ってほんと、大変ね!

さささ、嫌なことは飲んで忘れるに限る。飲みましょうー。おー!」

 

ソの腕を引き、自分の隣りの席に座らせようとするス。

 

「ところで、なぜおまえたちがここにいる。

わたし以外の男をこの部屋に入れるな」

 

「なに言っているのよ!

ペガさまもジョンさまもわたしの親友よ。

陛下よりも友だち歴は長いんだから!」

 

「友だち歴…?」

 

「あー、ほんと、なにもかも堅苦しくて、しょうがないわ。

ペロベロベーだ」

 

「ベロベロベー、だ、と?!」

けれど、そんなスの姿が可愛くて、思わず吹き出してしまうソ。

 

呆れながら渋々とイスに座ろうとすると

「陛下もそんな堅苦しい服、脱いじゃいなさいよ!

馬鹿みたいに大きなかぶり物もここでは必要ないわ。

家では寛がないと。今日は無礼講よ、無礼講!」

 

見れば鎧を脱いだジョンだけでなく、

ペガも身軽な格好になり、スは腕まくりまでしている。

 

「陛下も、ね、ね」とソの服を脱がせようとするス。

 

「おいおい、おまえ…、やめろ、やめろ」と慌てるソ。

 

「わかった、わかったから。さあ飲もう。酒を注げ」

ベロベロになりながら「おっとっとー」とソの盃に酒を注ぐス。

「おまえ、こんなに飲んで大丈夫か?」と心配するソ。

 

そんなイチャイチャなふたりに顔を赤らめ、苦笑いするペガとジョン。

 

 

 

 

夜もふけ、さらに呂律のまわらないス。ソにくだをまく。

 

「だいたいねー、家族は仲良くしないとダメなのよ。

今日は皇太后さまにきちんと挨拶できたのは良かったけど

フォンボさま一族に対するあの態度はなに?

ウクさまもヨナさまも兄弟なのだから

どんなに意地悪な人だとしても、礼儀正しく、少しは優しくしないと…。

 

それにね! 

親兄弟がいるだけ、ありがたいと思いなさい!

わたしなんて、親とは会えないし、妹や弟とも…」

 

「あれ、スの両親は亡くなったと

ミョン姉上にきいたが、妹や弟がいるのか…?」とペガ。

 

「わたしの妹や弟…。

ううん、、、、わたし、湯浴で頭を打ってから、記憶障害になっちゃって、、、

どうだったかなー。へへへ。

とにかく、わたしみたいに家族のいない身からすると、

お母さんや兄弟がいるのが羨ましいわ」

 

「家族がいないだと?」

 

少し酔いながらも、キュッとした目でスを見るソ。

 

「わたしが家族だ。おまえの家族はわたしだろう」

 

「あああ、そうね、そうでした陛下。へへへ」

 

「おまえにはわたしがいる。ふたりの弟もいる。それで十分だろ」

 

 

 

完全に酔っぱらったスはソの肩にもたれかかって寝てしまう。

  

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スの肩をそっと抱きながら、ペガ、ジョンに向かって

 

「今日は感謝する…」

 

 

(続きます)

 

 

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元旦節の朝賀のイメージはラストエンペラー

高麗の偉大なる皇帝ならば、皇宮広場を埋め尽くすほどの臣下にかしずかれても良いのかな、と思ったのです。

ただ単に、ワン・ソさまというか、イ・ジュンギさまにそんなシーンを演じて欲しかっただけなんですけどね。もちろん、完全な妄想(フィクション)です。

 

ご存知のとおり、ヘ・スはコ・ハジンが現代からタイムスリップした人なので、物語の前半では現代人ならではの価値観と言動で周囲を振り回します。けれど、オ尚宮の死あたりから、高麗で生きることの厳しさが身につき、だんだんと大人しくなってしまいました。少女から大人になったということもあるのでしょうけれど。

 

ただ、わたしとしては、ラストに近づくに従ってのスのテンションの落ち方が、どうも共感できない。どうにもならない状況やら、ラストに明かされるソとの子どものこととか、いろいろとあるでしょうけど、せっかく現代からタイムスリップしてきたのだから、持ち前の明るさとバイタリティでもっと「攻め」の生き方をしてもよかったのではないかと思います。

 

そんな気持ちも込めつつ、「打ち上げ」のシーンを描いてみました。