【昭と樹】麗 花萌ゆる8人の皇子たち(Moon Lovers 月の恋人 歩歩驚心)《二次小説》

18話があまりにも辛すぎて、受け入れることができず…

【愛とは。】7…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》

 

 

「今日は感謝する…」

 

「そんな、陛下」「兄上」…

皇帝である兄からの言葉に、驚き、かしこまるペガとジョン。

 

「危険なことをしたと分かっている。

 

スだけでなく、おまえたちも命を狙われるかもしれない。

けれどどうしても、スを自分の妻だと、わたしの皇后はスだけだと知らしめたかった。

これは、皇帝としてではなく、ひとりの男としての意地だ」

 

自分の肩にもたれかかり、安らかに寝息をたてるスを優しく見つめる。

 

視線を2人に戻し

「おまえたちを巻き込んでしまって、すまない」

 

…なかなか、言葉を発することができないペガとジョン。

 

ようやく口を開いたペガ

「既に皇帝の婚姻に関する伝達書が、豪族たちにまわっていると聞きました…」

 

「伝達書には皇后の名前を書かなかった。皇后は空白だ。

これからどうなるかは分からない。

 

だが、スとおまえたちは守る。支えてくれ」

 

「もちろんです」

「はい、兄上」

 

 

****

 

 

スを抱きかかえ寝かしつけるソ。幸せそうに眠る姿を見て、優しい顔に。

 

 

****

 

 

夜の皇宮を並んで歩くペガとジョン。

 

ふっと小さなため息をつきながら、ペガ

「おふたりには幸せになってもらいたい」

「ああ、そうだな」

「皇宮は、辛いことが多すぎる。

今日の一件でファンボ一家がさらに圧力をかけてくるだろう…」心配顔のペガ。

 

空を仰ぎ見ながら、ジョン

「俺は兄上のことをずっと誤解していた。

母上やヨ兄上から厄介者だと聞かされて育ってきた。

ス姉上がいなければ、兄上の真心が一生分からなかっただろう」

「ああ」

「どんなことでも乗り越えてきたあのおふたりだ。大丈夫。俺たちが支えよう」

 

 

****

 

 

二日酔いの頭を押さえつつ、朝光の眩しさに目を開けるス。

そこには、愛する人の顔が。

左顔にかかる漆黒の美しい髪。閉じられた右目。

 

(刃のように鋭い瞳も、わたしを見るときだけはとても優しい。

そして閉じられているときはこんなにも安らか。

一筋に通った鼻。整った輪郭。なかなかの美男子よね。

少しふっくらした唇。この唇がわたしへの愛を語り、口づけをする)

 

左顔にかかった髪をそっとかき分ける。額と左頬には深い傷が。

 

指先で傷に触れながら

(湯浴で怯えながら左顔を隠したあなた。

みなの前で仮面を取ったときの瞳。

そして化粧で傷を隠したあの日。

この傷をいちども恐いとも醜いとも思ったことはない。

傷があろうとなかろうと、あなたを愛することに変わりはない)

 

その声が聞こえたかのように、ふっと顔をゆるませて目を開けるソ。

視線をからませながら

「おはよう、わたしの人」…幸せな笑顔になるス。

 

「目が覚めたときに、おまえがいる。

起きておまえを見、おまえを見て眠る。

こんな幸せなことがあるだろうか…」

 

そっと抱き寄せて

「おまえの前では何者でもない自分でいられる」

 

 

朝光に包まれ抱き合うふたり。

 

 

「昨日は酔っぱらってごめんなさい。

あんなところに座らされて、恐かったし、不安だった」

 

「わたしが悪かった。いまも恐いか?」

 

「大丈夫…」

 

「大丈夫だ、なにも変わらない」

 

スの額に優しくキスをするソ…。

 

 

 

 

「ゆうべ、おまえの寝顔を眺めながら考えた。

 

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わたしはおまえを守りたくて皇帝になった。

皇帝になれば、すべてが手に入り、守りたいものを守れると思った。

だがそれは違った。

皇帝になると本当に大切なものよりも、

皇位を守ることを優先させなければならぬ。

 

では、その守るべき皇位とはなにか?

 

皇宮や豪族たち、そして民を守るために皇帝で居続けることが、

皇位を守るということなのだろう。

 

では

 

果たして、皇帝はわたしでなくてはいけないのだろうか?」

 

 

目を丸くしてソの顔を見るス。

 

 

「もちろん、先帝が崩御する際、混乱を防ぐことができ、

もっとも皇帝としてふさわしい立場にいたのはわたしだった。

天もおまえも味方してくれた。

わたしなら皇帝として、誰よりも優れた政を行うことができる

そう思う気持ちはいまも変わらない。

 

ただ…

ウクは頭が切れ武芸にも秀でている。

ペガは優しさと知性で人を惹きつける。

ジョンは周辺の国々を驚かす力にあふれている。

わたしでなくても、皇帝は務まるのではないか?

 

皇帝はわたし以外の人間にもできる」

 

スの顔をじっと見つめるソ。

 

「だが、おまえを愛し、守ることができるのはわたしだけだ」

 

そんなソの顔をしっかりと見つめ、胸に顔をうずめるス。

ギュッと抱きしめ、大きく息を吐いて

 

 

「陛下、新しい一日がはじまります。さあ、起きましょう」

 

 

 

(続きます)

 

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16話でようやく結ばれたふたり。

眠っているスの顔にそっと触れるソ。目を開けたスと見つめ合い、微笑み合うあのシーンは本当に美しいものでした。影絵を挟んで、朝食のシーンも大好きです。

あの後、すぐにお邪魔虫ジモンがやってきて、ソは皇帝になり、悲劇へと進んでいくオリジナルストーリーでは、ふたりがイチャイチャする時間があまり描かれませんでした。

ふたりの初めての朝の逆バージョン、いかがでしょうか♪