【愛とは。】7…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
「今日は感謝する…」
「そんな、陛下」「兄上」…
皇帝である兄からの言葉に、驚き、かしこまるペガとジョン。
「危険なことをしたと分かっている。
スだけでなく、おまえたちも命を狙われるかもしれない。
けれどどうしても、スを自分の妻だと、わたしの皇后はスだけだと知らしめたかった。
これは、皇帝としてではなく、ひとりの男としての意地だ」
自分の肩にもたれかかり、安らかに寝息をたてるスを優しく見つめる。
視線を2人に戻し
「おまえたちを巻き込んでしまって、すまない」
…なかなか、言葉を発することができないペガとジョン。
ようやく口を開いたペガ
「既に皇帝の婚姻に関する伝達書が、豪族たちにまわっていると聞きました…」
「伝達書には皇后の名前を書かなかった。皇后は空白だ。
これからどうなるかは分からない。
だが、スとおまえたちは守る。支えてくれ」
「もちろんです」
「はい、兄上」
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スを抱きかかえ寝かしつけるソ。幸せそうに眠る姿を見て、優しい顔に。
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夜の皇宮を並んで歩くペガとジョン。
ふっと小さなため息をつきながら、ペガ
「おふたりには幸せになってもらいたい」
「ああ、そうだな」
「皇宮は、辛いことが多すぎる。
今日の一件でファンボ一家がさらに圧力をかけてくるだろう…」心配顔のペガ。
空を仰ぎ見ながら、ジョン
「俺は兄上のことをずっと誤解していた。
母上やヨ兄上から厄介者だと聞かされて育ってきた。
ス姉上がいなければ、兄上の真心が一生分からなかっただろう」
「ああ」
「どんなことでも乗り越えてきたあのおふたりだ。大丈夫。俺たちが支えよう」
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二日酔いの頭を押さえつつ、朝光の眩しさに目を開けるス。
そこには、愛する人の顔が。
左顔にかかる漆黒の美しい髪。閉じられた右目。
(刃のように鋭い瞳も、わたしを見るときだけはとても優しい。
そして閉じられているときはこんなにも安らか。
一筋に通った鼻。整った輪郭。なかなかの美男子よね。
少しふっくらした唇。この唇がわたしへの愛を語り、口づけをする)
左顔にかかった髪をそっとかき分ける。額と左頬には深い傷が。
指先で傷に触れながら
(湯浴で怯えながら左顔を隠したあなた。
みなの前で仮面を取ったときの瞳。
そして化粧で傷を隠したあの日。
この傷をいちども恐いとも醜いとも思ったことはない。
傷があろうとなかろうと、あなたを愛することに変わりはない)
その声が聞こえたかのように、ふっと顔をゆるませて目を開けるソ。
視線をからませながら
「おはよう、わたしの人」…幸せな笑顔になるス。
「目が覚めたときに、おまえがいる。
起きておまえを見、おまえを見て眠る。
こんな幸せなことがあるだろうか…」
そっと抱き寄せて
「おまえの前では何者でもない自分でいられる」
朝光に包まれ抱き合うふたり。
「昨日は酔っぱらってごめんなさい。
あんなところに座らされて、恐かったし、不安だった」
「わたしが悪かった。いまも恐いか?」
「大丈夫…」
「大丈夫だ、なにも変わらない」
スの額に優しくキスをするソ…。
…
「ゆうべ、おまえの寝顔を眺めながら考えた。
わたしはおまえを守りたくて皇帝になった。
皇帝になれば、すべてが手に入り、守りたいものを守れると思った。
だがそれは違った。
皇帝になると本当に大切なものよりも、
皇位を守ることを優先させなければならぬ。
では、その守るべき皇位とはなにか?
皇宮や豪族たち、そして民を守るために皇帝で居続けることが、
皇位を守るということなのだろう。
では
果たして、皇帝はわたしでなくてはいけないのだろうか?」
目を丸くしてソの顔を見るス。
「もちろん、先帝が崩御する際、混乱を防ぐことができ、
もっとも皇帝としてふさわしい立場にいたのはわたしだった。
天もおまえも味方してくれた。
わたしなら皇帝として、誰よりも優れた政を行うことができる
そう思う気持ちはいまも変わらない。
ただ…
ウクは頭が切れ武芸にも秀でている。
ペガは優しさと知性で人を惹きつける。
ジョンは周辺の国々を驚かす力にあふれている。
わたしでなくても、皇帝は務まるのではないか?
皇帝はわたし以外の人間にもできる」
スの顔をじっと見つめるソ。
「だが、おまえを愛し、守ることができるのはわたしだけだ」
そんなソの顔をしっかりと見つめ、胸に顔をうずめるス。
ギュッと抱きしめ、大きく息を吐いて
「陛下、新しい一日がはじまります。さあ、起きましょう」
(続きます)
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16話でようやく結ばれたふたり。
眠っているスの顔にそっと触れるソ。目を開けたスと見つめ合い、微笑み合うあのシーンは本当に美しいものでした。影絵を挟んで、朝食のシーンも大好きです。
あの後、すぐにお邪魔虫ジモンがやってきて、ソは皇帝になり、悲劇へと進んでいくオリジナルストーリーでは、ふたりがイチャイチャする時間があまり描かれませんでした。
ふたりの初めての朝の逆バージョン、いかがでしょうか♪