【愛とは。】3…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
「母上が元気になられて良かったです」
「ああ、ジョン。ありがとう」
「お茶をご用意しました」
一口飲む。
「これは…?」
「はい、スがよく効く漢方を遠方から取り寄せたそうです」
「そうか、スか」
穏やかに、ため息まじりで。
「直接、礼を言う。スをここに呼びなさい」
「皇太后さま、入ります」
見つめ合う、皇太后とス。
しばし沈黙。
スはフッとため息をついて。
「皇太后さまにずっとお話したいことがありました」
「ん?」
「先帝の遺言書のことです。前回は嘘をつきました。
陛下が破り捨てたあの遺言書には、
次の皇帝の名前が書かれていませんでした」
「なんと?」
「次の皇帝の名前は空白だったのです」
静かに話し出すス。
「あのとき…
皇太后さまが外に出たあと、先帝は遺言書を書き始めました。
次の皇帝に誰を指名するか、、、
ジョンさまか、ウクさまか、ペガさまか、
それともソさまか…答えは出ませんでした。
そしてわたくしに向かってこう仰ったのです。スよ、お前はすべてを見て来た。
お前が次の皇帝を決めろ、と」
遺言書と筆をわたくしに差し出されて、そのまま息をお引き取りになりました」
「そこに陛下があらわれ、遺言書をご覧になり、破り捨てたのです」
その後のことは、皇太后さまもご存知のとおりです。わたくしが次の皇帝を陛下に指名しました。
「なんということだ…」
「陛下は次の皇帝の名前が書いていない遺言書があることで
混乱を招きたくなかったと仰いました。
あのとき既に皇宮は陛下の兵で包囲されていた。
名前が空白の遺言書を破り捨てることで、ご兄弟や甥たちの血を見ることを陛下は防いだのです。
わたくしも陛下とジョンさまたちが争う姿を見たくなかった。
罪があるとしたらわたくしです。どうかわたくしを罰してください」
…
「スよ、ありがとう」
顔を上げるス。
「美味しいお茶だった。
わたしはお茶のお礼を言いたくておまえを呼んだのだろう?」
(続きます)
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鬼よりも恐ろしい皇太后がこんな対応をするなんて、本編ではあり得ないのですが、この物語は18話からのパラレルワールド。
17話でスは皇太后に遺言書のことを聞かれますが、ワン・ソが現れ、先帝は自分に譲位したと嘘をつきます。きっとスは正直に話したかったんじゃないだろうか。勝手に行くなと陛下にまで怒られちゃって可哀想でした。
ソがついた嘘を告白し、真実を語るス。
母の愛を求めながら、母をまったく信用していないソ。
ソが命のために選択した嘘をスが正直に話すことで、皇太后に自分たちの命を委ねます。