【愛とは。】16…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
「しばらく陛下は戻らない…」
スにそう告げるペガ。
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数ヶ月後。
季節は冬から春へ。
…
書斎でひとり机に向かうス。
行到水窮處
坐看雲起時
紙を重ね、 文字をなぞる。
瞳に涙を堪えるス。
新しい紙をもう一枚だし
また重ねようとするが…
ふとなにかを思い、ソからの文を脇に置く。
真っさらな紙に向かい
筆を運ぶ。
…
興来毎独住…
…
キュッと口を結び、決意を込めたような顔つきになるス。
(もう泣かない。わたしは大丈夫…)
ふっと柔らかな表情になる。
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ウクの屋敷----
ミョンとの想い出の場所、願いの石塔。
祈りを捧げるス。
まわりに落ちている石を拾い、持ち帰る。
その姿を見て、近づくヨナ。
「あなた、こんなところに来てなにをしているの?」
ばつの悪そうな顔で、静かに会釈するス。
苦々しい表情で
「陛下が苦労して各地をまわり、
我が兄上が幽閉され苦渋を味わっているというのに…
あなたはひとり気楽でいいわよね」
じっと下を向いたままのス。
「皇帝が自ら豪族のもとに赴くなんて、
笑いごともいいところだわ。
皇位も地に落ちたものね。
これも全部、あなたのせいよ」
ヨナ、ぐっと拳に力を込める。
「この窮地を救えるのは、わたしだけよ。
陛下との婚姻は諦めていないわ。
覚えておいてちょうだい」
…
だまって背中を向け、立ち去るス。
その姿をみて、ふとなにかに気づいたようす。
片側の口角がキュッと上がり、悔しそうにまた拳を握る。
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石塔から門に向かい、外に出ようとするス。
今度はウクがそれを見つける。
後ろ姿に
「よく、ここへ来れたな」
ウクに気づいて一礼しながら
「申し訳ありません。
どうしてもミョンさんの石塔にお参りしたくて…」
石の入った袋を重そうに手に捧げ持つ。
…
「ソに捨てられたな」
「…ウクさまはそう思いますか?」
視線を交えるふたり。
…
「いずれにしても奴は戻らない。
そろそろ観念しろ。
わたしの者になれ」
…
ウクの言葉を聞いて、小さなため息をつくス。
頭をさげながら
「失礼します」
…
スの後ろ姿に向かって、囁くような小さな声…
「金城が奴の死に場所だ…」
(続きます)
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最後のウクの台詞で地名を変えました。あまり大きな意味はありません。フィクションですので、ご了承ください(201014/2200)