番外編【愛とは。】行到水窮處9…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
(ごめんなさい。ごめんなさい)
水の中に静かに沈んでいく…
…
現代。ソウル。
肖像画の前で、崩れ落ち意識を失う女性。
…
そのとき、
背後からひとりの男が近づく。
…
「大丈夫か?!」
…
膝をつき、体を起こす。
「どうした? しっかりしろ!」
…
(ああ、この感触、香り、声…)
冷たく閉ざされた心を溶かす懐かしい声。ずっと、ずっと恋いこがれ、夢にまでみたその温もり。
ゆっくりと瞳を開ける女性。
目の前には、記憶のままの男が。
(ああ、良かった)
少し落ち着きを取り戻して
「わたし…」
その顔を覗き込む男。
男をじっとみつめ
「わたし、わたし…」
「ん?」優しく微笑みかける男。
腕にギュッとしがみつく。
その手に力を込めて
「陛下…」
顔を緩ませ、頬の涙を指で拭いながら
「ハジン、そのあだ名はもう、とうの昔に…」
「ハジン? わたしはハジンなの?!」
男、再び心配そうな顔になり
「そうだよ、ハジン。大丈夫かい? どこか痛むか? 気分はどうだ?」
「ええ。息が苦しくて、頭が…」
胸、そして頭を抑えながら、まわりをゆっくりと見渡す。
自分の身なり、そして、目の前の男をもう一度眺めながら
「ここはどこ?
わたし、どうしてここにいるの? 池に飛び込んで、溺れて、それから、それから…」
なにかを思い出そうとして、顔を顰めるハジン。
「そう、高麗…」
男が僅かに目を見開き、口もとを引き締める。
ハジンの手を取って、ゆっくりと話し出す。
「ハジン、わたしの目をみるんだ。
ここはソウル。中央デパートの展示室だよ」
「ソウル、中央デパート…?」
(続きます)
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「中央デパート」は筆者の創造になります。本編(オリジナルストーリー)ではデパート名は出てきません。