番外編【愛とは。】兄として3(完)…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
屋敷裏にあるミョンの願いの石塔。
ひとり佇むヨナ。
手には一通の書状が。
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ヨナの自室。
寝台に腰掛けたまま、魂が抜けたようにぼうっとしている。
先ほど見かけた、兵に連れられ幽閉される兄の姿が頭に浮かぶ。
…
そのとき、扉を控えめにノックする音。
立ち上がり、扉を開くとそこにはミョンの兄が。
「ヨナ、久しぶりだな」
しっかりと顔を見つめながら
「そなたにこれを預かってきた」
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石段に腰掛け、そっと書状を開くヨナ。
花迎喜気皆知笑
鳥識歓心亦解歌
…我が妹、ヨナ。
わたしは皇帝としてではなく、そなたの兄としてこの手紙をしたためる。
幼きころから、人を信じることができず、家族と呼べる者がいなかったわたしだが、松嶽を訪れるたびにそなたがわたしを気遣ってくれたこと、心からの礼を述べる。
わたしは不器用な人間で、情というものを区別することができない。聡明なそなたにとって、わたしはもどかしい存在であったであろう。
こんなわたしだが、わたしなりに精一杯、そなたを妹として気にかけている。
どうか、幸せになってほしい。
そなたが想い描く幸せを、追い求めてもらいたい。
気高く、自由に、自分らしく、生きよ。
そのために兄はどんな助けをも惜しむことはない。いつまでも。…
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その日の朝。
婚礼の儀の前にひとり机に向かうソ。
前夜のスとの会話を思い浮かべる…
…
「それから、もうひとつだけお伝えしたいことが…」
「なんだ、まだあるのか?」
「ヨナさまのことです」
眉を顰めて「ヨナ?」
「はい、ヨナさまはずっと陛下をお慕いしていらっしゃいます」
驚いた顔のソ。
「気づいていらっしゃいませんでしたか?」
…
目の前に広げた紙に筆を落とすソ。
(わたしができることは、これくらいだ。すまない)
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手紙を胸に抱き、静かに涙を流すヨナ。
(番外編/兄として、おわり)
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書状の詩は
王維「 既蒙宥罪旋復拝官(忽蒙漢詔還冠冕)」
花迎喜気皆知笑 花は喜気(きき)を迎えて 皆笑うを知り
鳥識歓心亦解歌 鳥は歓心(かんしん)を識(し)りて 亦た歌を解す
(訳)
花は嬉しさを汲み取って にこやかに咲きこぼれ
鳥達は歓びの心を知って 歌声を響かせる
漢詩を楽しもう tiandaoの自由訳漢詩 ティェンタオの自由訳漢詩 王維103-106
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番外編【愛とは。】兄として 最終話はヨナ皇女でした。
プライドが高く、聡明で、美しいヨナ。男性に生まれていたら、自らの手で皇位を勝ち取り、皇帝になっていたかもしれませんね。
ワン・ソさまの幸せを応援するだけのわたしとしては「本当にイヤな奴!!!」でしたが、実はへ・スよりもずっと前からソ兄上のことをお慕い申し上げていた。逆プロポーズもしていますしね。途中、契丹に送られそうになったり、ヨ兄上からの求婚といった試練がありつつ、悪巧みに走るのは、彼女の考える「生き残る人生」にあっては、道理に適った妥当な選択だったのだと思います。
考えてみたら、母であるファンボ皇后がユ皇后に陥れられ(オ尚宮の流産事件)、流刑になったのは、ウクとヨナがまだ幼いころ。帰郷刑ではなく流刑なので、北の寒いエリアにいたと言っていました(だから国境近くのヘ氏と交流があり、助けてもらったのかと推察)。皇女として生まれたのに酷い扱いを受け、トラウマになっていてもおかしくはありません。
オリジナルストーリー(本編)では、見事に初恋を実らせ(?!)皇后になります。が、わたしの中ではそれはなかったことになっております…。
ヨナを演じるカン・ハンナさんは本当にお美しい方。この美貌あっての悪役だと、改めて絶賛しております!
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番外編はひとまずお終いですが、またもしかしたら…♪と思っております。
今後は『麗』にまつわる雑文などをアップして参ります。引続き、どうぞよろしくお願い致します。
今日の番外編は【愛とは。】第34話とリンクしています。ソとスの婚姻前夜のやり取りは第33話にあります。
もう一度、最初から妄想二次小説を読みたくなった方は、こちらからどうぞ!
ありがとうございます♪