【愛とは。】19…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
季節はめぐり、初夏に。
松嶽。正殿。
空席の玉座を前に、ペガとジモンが向かい合う。
ジモン「今朝、使者が戻りました」
ペガ「陛下からなにか報告は?」
「北方とのトラブルはほぼ平定。
慶州で新羅出身の豪族との交渉も終え
いまはかつての後百済の地に赴いているところです」
…
そこへ現れるウォン。
がらんとした正殿のようすをみて
「おまえが摂政では松嶽の政は機能していないも同然だな」
「ウォン兄上…」悔しそうに拳を握るペガ。
静かに会釈をするジモン。
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茶美園で卓を囲むヘス、ペガ、ウヒ。
ペガ「わたしには皇帝の代理は重荷だ。
名ばかりの摂政でウォン兄上に嗤われた。
ウク兄上ならばもっとうまく治めてくれるだろうに…」
ス「ペガさま、そんな…。
陛下が不在の間、よくお務めになっています」
はあ…とため息をつきながら
「陛下は慶州で新羅出身の豪族たちと交渉をもったとのことだ。
我が母一族とも会ったようで、母上も喜んでいた」
「それは良かったですね」と微笑むス。
「そうだ、ウヒ。この後は完山にまわるそうだ」
「完山…ですか…」ウヒ。
「ああ、後百済の移民たちへの対応を終えたら、陛下もそろそろ松嶽に戻れるだろう」
浮かない顔で下を向くウヒ。
…
ペガはそれに気づくことなく、スの顔をみて
「陛下が不在でも宮廷行事は大切にせねば。
来月の七夕(しちせき)の節句は行いませんか」
「あら、それはいいですね。
では準備を茶美園に言い渡しましょう」
「星に願えば、高麗にも皇宮にも、平和が訪れるでしょう…」
…
そこへやってくるジモン。
「あっ、ちょうど良いところにきた、ジモン。
来月の七夕を行おうと思う。準備をたのむ」
「はい、かしこまりました」
頭をさげるジモン。
「七夕といえば、芸事の上達…
久しぶりにペガさまの筝が聴きたいものです」
「よし、奏でよう。たまには気分転換もしなければな…」
楽しそうに笑い合うペガ、ス、ジモン。
ただひとり、暗い表情のウヒ。
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ウクの屋敷。
黄州院ファンボ氏、ウク、そしてウォン。
黄州院「ソの地盤固めは順調だとわたしの耳にも入っている。
どうなっているのだ?!…」
ウク、ウォンに向かって「次の手は打ったのか?」
ウォン「周辺の警備が固く…。なにかに別の方法も考えましょう」
ウク「そうだな、それにしても、目障りなのは…」
…
ドアを開けそこに現れたのはヨナ。
「どうしてわたくしだけ仲間はずれなのですか?」
ウク「もう陛下との婚姻は無理だ。諦めろ」
不敵な笑みを浮かべて
「そうですか…。
ああ、そういえば
面白い話がありました。ヘスは…」
夜は更けていく。
(続きます)
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