【愛とは。】5…麗 花萌ゆる8人の皇子たち18話から《二次小説》
皇宮のあちこちで、皇帝とヨナ皇女の婚姻の噂がささやかれる中、
庭を眺めてぼんやりとしているス。
そんな姿を見つけ、意地悪そうな笑顔で近づくヨナ。
「あら、まだこんなところをウロウロしていたの?
恐ろしくてどこかに逃げ出したかと思っていたわ。
元旦節の後、吉日を選んで陛下とわたくしの婚姻の儀が行われる。
心づもりしておきなさい」
****
陛下の御前。冷血な表情でソに近づくウク。
「このままでは元旦節の朝賀に豪族たちは誰も集まりません。
早く決断なさらないと、命を落とすことになりかねませんぞ」
***
正殿の玉座でひとり考えごとをしているソ。
手もとには皇帝の婚姻に関する伝達書が。
そこに現れたス。お面をもって、儺礼のお祭りに行こうとソを誘う。
着替えて街に出かけるふたり。子どものようにはしゃぐ、幸せなひととき…
東池。
スがつくった願いの石塔へ。
ソ「わたしと婚姻しよう」
ス「できません」
ソ「婚姻できなくても、わたしの皇后はおまえだけだ」
****
年が明け、元旦節の準備に忙しい皇宮。
新皇帝が誕生した初めての朝賀とあって、多くの豪族が参宮にやってくる。
そんな人々を眺め、浮かない顔のス。
女官が現れ「お嬢さまもお支度を」と告げる。
部屋に戻り、用意された服に着替えるス。
髪にはきらびやかなかんざし。
自分の姿を鏡で見て(わたしが着る服としては、ちょっと大げさじゃない?)
****
そのころ、陛下の御前に呼ばれたジョン。傍らにはペガとチェ・ジモンが。
「言いつけ通り、元旦節が終われば、明日にでも忠州へ参ります。
刑罰でもなんでも、好きなだけ与えればいいでしょう」
ソをキッと睨むジョン。
表情を崩すことのないソ。
「皇弟ワン・ジョン、そなたに本日の警備を申し付ける。皇帝とその側を守れ」
「その側?」
「皇軍の兵をつける。スから離れるな」
ペガの方を向き「おまえもな。頼んだぞ」
****
間もなく朝賀の時間。鏡を前にぶらぶらと自分の姿を眺めながら
(やっぱりわたしも出ないといけないのかしら…)
不安なようすのス。
そこへ現れたソ。「時間だ。行こう」と手をさしだす。
…
回廊を通り、皇宮前の広場へ。
多くの豪族が並ぶなか、スを後ろに従え、玉座へと進むソ。
その両脇には、ジョンとペガ。
ゆっくりであるが確実に、堂々と、歩みを進める皇帝ワン・ソ。
その背中に向かって、小さな声で
「陛下ー、陛下ー。わたくしはどこにいればいいですかー」
小さく振り返り、サッと視線だけをスに向ける。
顎で玉座の隣りの席を示す。
驚いたスに「ジョンとペガから離れるな」
(婚姻を断ったのに、なぜ?)
瞳を見開いてソの背中を見つめるス。
立ち止まり、ギュッと目をつむる。
(ここまできたら、もう後戻りはできない。陛下を信じよう)
目を開き、大きく息を吐く。
一歩一歩、薄氷の上を歩くように足をすすめるス。
どんなに恐ろしいことが起きようとも、もう逃げることはできない。
階段を登り、ついに玉座の隣り、皇后のイスへ。
座るよう促されるス。
(覚悟は決まっている。わたしはこの人と生きていく)
腰をおろし前を見る。
皇族、豪族、兵たち、広場を埋めるほど大勢の姿が立ち並ぶ。
その中には、皇太后ユ氏も、ファンボ一族も…。
一斉に注目を浴び、視線に耐えられず、下を向くス。
(わー、やっぱり相当やばいよ。どうしよう。ヨナさまも睨んでるし…!)
その姿をすぐ後ろで見守るジョンとペガ。
一瞬の静けさの後、響き渡るチェ・ジモンの声。
「新皇帝陛下に謹んで新年のご挨拶を申しあげます」
「皇帝陛下、万歳、万歳、万々歳」一斉に跪き、広場に鳴り響く、人々の声。
手を握りしめ、その光景をじっと見つめることしかできないス。
皇帝ワン・ソは、表情を変えることなく、人々を見下ろす。
(続きます)
********
オリジナルドラマの18話は盛りだくさんで、ふたりとその周辺の状況がめまぐるしく変わります。その中でも印象的だったのが、変装してでかけた儺礼のお祭り。スが新たにつくった願いの石塔の前でプロポーズをしますが…結果はこの二次小説でも同じです。
だけど、そのまま陛下とヨナが婚姻してしまうのは、わたしとしては絶対にイヤ。なのでソに元旦節でこんな行動を起こさせます。この後にたとえヨナと婚姻することになっても、自分の皇后はスだけだということを臣下に知らしめる。これは危険な行為ですが、ソにはこれくらいのことをやって欲しいな…という勝手な妄想であり願望です。
ちなみに、元旦節や朝賀の儀式は、創作です。実際の高麗時代や韓国にこのような行事があったかどうかは、不明です。